パッケージ以外でもパルプモールドが使われる時代に

エコ素材 コストダウン パッケージ

こんにちは。はやとです。
いつもご覧いただきありがとうございます。
今回のテーマは、「パッケージ以外でもパルプモールドが使われる時代に」です。

本記事のポイント

  • パルプモールドはパッケージだけでなく、あらゆる分野で活躍する商材になる

僕は先日このようなツイートをしました。

簡単自己紹介

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本記事の内容

  • パルプモールドとは
  • パルプモールドの歴史
  • パルプモールドのメリット
  • 今後はパッケージ以外で活躍
  • 本当にエコなの?
  • パルプモールドのデメリット
  • ゴミ分別について
  • まとめ

パルプモールドとは?

パルプモールドをひと言でいうと、

使い古した段ボールや新聞紙などを再び水で溶かして金型で成形したもの

パルプモールドの作り方については、とても分かりやすく説明がされている株式会社大成さんのWebサイトをご覧ください。
アニメーションを交えて説明されていて、とても参考になるかと思います。

パルプモールドは茶色や灰色をイメージする人がたくさんいますよね。あれって実はほとんどが皆さんが使い古した新聞や段ボールを再利用しています。ほぼ100%リサイクル材です。
最近はサトウキビの搾りカス(通称:バガス)や竹などの非木材パルプを使ったものが増えてきています。
昨今、地球環境問題が深刻化するなかで、パルプモールドはCO2削減に大きく貢献しているということで、パッケージ(包装)資材を中心に幅広く使われるようになってきました。

パルプモールドの歴史

パルプモールドはもともとスピーカーコーンだった

スピーカーコーンをまじまじと見たことある人は少ないと思いますが、昔のステレオの中をのぞいたことがある人はピンとくると思います。

しかし、パルプモールドだと耐久性が悪く、長く使うことで破れなどが発生してしまうので、現代は紙ではない様々な素材が使われています。
スピーカーコーンの生産で培った技術を何かに生かせないかということで、パッケージ(包装)資材に転用されてきて、現代に至ります。

パルプモールドのメリット

パルプモールドってこんな良いことがある

  • エコ
  • 水に溶ける
  • かさばらない

エコ

原材料は古紙を再利用しますので、古くなったものを有効活用できるという意味では超エコです。
また、パルプモールドを生産するときに排出される工場CO2も少ないので、CO2削減にも貢献できます。

水に溶ける

直近の「エコ」に対する考え方の基本として「海洋汚染」があげられます。
海に流れ着いたプラスチック材などはずっと浮遊してウミガメやクジラがそれを食べて死んでしまうという社会問題が話題となっていたりします。
パルプモールドが海にたどり着くことは少ないですが、仮にたどり着いたとしても水に溶けて自然に戻りますので安心です。
また海に行くと漁師さんが魚を入れる箱で発泡スチロールが使われています。
保温性に優れ軽くて丈夫なことから長く使われているものですが、海に行くとこれらの発泡スチロールが海岸線に打ち上げられているものをよく見ますね。
これらの発泡スチロールが紙素材に変わっていくと、もっと世の中が良くなっていくのかもしれません。

かさばらない

パルプモールドは形状がシェル化されているため、重ねることができます。
輸送時に空気を多く運ぶ発泡スチロールに比べて効率が上がりますので、トラックから排出されるCO2削減に貢献していると言えます。
また業者は倉庫にストックする際に、重ね合わせて保管でき、倉庫スペースを確保できるというメリットがあります。

写真:コーヒーとか複数買って持ち帰りにすると付いてくるトレイ

今後はパッケージ以外で活躍

パルプモールドの超々定番は、皆さんもおなじみの卵のトレイですよね。
   

1990年代後半、地球温暖化問題の対策で石油由来素材の削減を各企業が取り組み始めました。
それまで大型家電の包装資材として発泡スチロールがパルプモールドに代わっていきました。
そのほかでは工業製品の部品トレイなどが一般的で、化粧品や個装パッケージにも採用されていています。

さて、ここからが今回の記事のメインとなりますが、パッケージ以外でパルプモールドがちらほら採用される事例が出てきました。
その中で僕が着目しているのは、「医療現場」での採用です。

なぜ今医療現場でパルプモールドが使われ始めているのか?

ポイントは3つです。

  • 洗わなくていい
  • 手間が省けてコスト削減できる
  • 環境対応

医療現場で日々使われている尿瓶や吐瀉物を受けるボウルなどは、ガラス製やプラスチック製がほとんどです。
これらの器具は使い終わった後に専用の洗浄ラインに入れ殺菌消毒して再利用しています。
しかし、これらの殺菌消毒の設備メンテナンスと洗浄する人件費で半端なくコストが掛かっているそうです。
ヨーロッパやシンガポールの病院では、尿瓶やボウルにパルプモールドを採用し、使い捨てにすることで殺菌消毒の手間を省くという取り組みが始まりました。
こうすることで、設備メンテナンスや洗浄に掛る人件費を抑え、結果的にコストダウンが可能となるそうです。
使い捨てにしても紙素材なのでゴミ問題にもなりません。殺菌消毒も必要ありませんのでとても優秀な医療器具となるわけです。

洗わない、手間が省ける、環境に良い、この三拍子が揃うものが今後パルプモールドに代用できそうですね。
こういった視点で考慮すると新しいビジネスが生まれてくると思います。

本当にエコなの?

パルプモールドって本当にエコなのか?と疑問を持って持論を展開されている研究者がいます。
どうしてこういう疑問が湧くかというと、紙そのものを生産する過程で大量のCO2を発生させ、それがプラスチックを生成するときに排出されるCO2よりも多いという研究結果もあるからのようです。
仮にこれが正しいとしても、パルプモールドに限ってはもともとの用途で使われたものを再利用しているわけですし、パルプモールドを生成する過程ではCO2排出量は極端に少ないのです。よって圧倒的に有効活用していると考えられます。
世の中に紙が存在している以上、このサイクルは有効と言えるでしょう。

つまり、究極のエコなのです。

以上のことから、パルプモールドはこれからも注目されていくこと間違いないでしょう。

パルプモールドのデメリット

ここまではパルプモールドの素晴らしい特性を説明してきましたが、そんなパルプモールドにも弱点はあります。

  • 水に弱い
  • 緩衝性が劣る
  • 見た目が悪い

ここでは、緩衝材として常に比較される「発泡スチロール」を例に挙げて説明していきます。

水に弱い

さっきのメリットでも同じことを説明しました。それは「海に流れても溶ける」というような内容です。
ただ、それが時にはデメリットにもなるということです。
紙なので仕方ありませんが、水に浸るようなことがあればヨレヨレになってしまいます。
ただ、高温多湿地域でもパッケージとしては十分機能しています。
話題になっている医療現場への採用では液体に浸ることが想定されるわけですが、こちらに関しては研究が進んでいて、簡単に浸透しないように材料や成形手法で工夫がされてきました。
24時間たっても形が崩れないなど、日々進化を遂げています。

緩衝性が劣る

パルプモールドは、パッケージの緩衝材として1990年後半から広く採用されてきました。
しかし今に至っても発泡スチロールに勝る緩衝性は得られていません。やはり発泡スチロールの緩衝性は優れています。
よって、超精密機械のパッケージなんかではパルプモールドが使えないのです。
厳密に言うと同じ緩衝性を持つことは可能です。ただ、箱のサイズが大きくなったりコストがめちゃくちゃ高くなったりと現実的ではなくなるため、メーカーは採用を見送ってしまいます。

見た目が悪い

発泡スチロールは主に白色ですが、緩衝材として使われるパルプモールドのほとんどは茶色か灰色です。
これは、段ボールや新聞紙を再利用していて、漂白するわけではありませんので、まぁ当然って話なのですが…。

ゴミ分別について

皆さん、段ボールを捨てるときって、その捨て方はご存知だと思いますが、パルプモールドの分別について知っている人はどれほどいますか?
そう、あまり知られていないと思います。というのも、まだまだパルプモールドを毎日お目にかかるようなことも少ないですし、自治体によっては分別方法を明確に定めていないところがあるようです。
また、いざ手元にパルプモールドがあったとしても、一般ユーザーにあまり認知されていないので人それぞれの分別がされていると予想します。

パルプモールドの回収は段ボールと同じでいい

僕の持論ですが、パルプモールドはシンプルに段ボールと同じ扱いで良いと思っています。
理由は、パルプモールドの素材は段ボールとほぼ同じだからです。
また、回収されたあとはまた段ボールやパルプモールドになりますからそうすればもっとリサイクル率が上がると思います。
今はそこを明確にしている自治体は無いと思いますので、今後そうなっていけばいいかなと思うところではあります。

まとめ

さて、いかがでしたでしょうか。
パルプモールドは今後いろいろなカテゴリーで登場し、さらに身近な存在になっていくと思います。
普段の生活でパルプモールドを見かけたら是非このような流れがあることを思い浮かべてみてください。
また別記事ではデザイン性の高いパルプモールドの紹介をしております。
興味がある方はこちらもご覧ください。
関連記事:パルプモールドはパッケージのトレンドになる

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