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iPhoneの箱のような「捨てたくないパッケージ」のヒミツ

お疲れ様です。管理人のはやとです。
いつもご覧いただきありがとうございます。
今回は捨てるのがもったいなく思ってしまうパッケージとはいったいどういうものなのかについてお話したいと思います。
✅こんな人におすすめの記事です

  • 貼箱についての知識を身につけたい
  • Vカットシャープエッジのことが知りたい
  • iPhoneの箱みたいに商品価値が上がるオリジナルパッケージをデザインしてみたい

📌 簡単自己紹介

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💡 なぜ「捨てたくない」と感じるのか?

みなさんは、パッケージを捨てるのがもったいないと感じたことはありませんか?
それは、「魅力的」「豪華」「何かの参考になりそう」と思うからではないでしょうか。

📦 代表的な「捨てたくないパッケージ」とは?

「捨てたくないパッケージ」の代表例といえば、やはりiPhoneの箱でしょう。

実際にメルカリなどのフリマアプリで空箱だけが高値で取引されることもあり、その魅力の高さが伺えます。

🔍 iPhoneの箱の魅力とは?

1️⃣ 構造

iPhoneの箱は深蓋タイプの貼箱です。上蓋と下の箱がぴったりフィットし、開けるときの適度な抵抗感が特徴です。

日本では一般的に上の箱を「蓋」、下の箱を「身」といい、セットで呼ぶときは身蓋(ミフタ)となります。
作り方は身蓋とも同じで、身蓋の寸法に少し差をつけて、身蓋を合わせるとちょうどピッタリ嵌るように作られています。
貼箱には必ず外側の紙と内側の紙で貼り合わせますので、紙が二重構造になります。


1.貼り紙に糊を付け、生地を置く

2.左右の貼り紙を生地に貼る

3.短いフラップを貼る(前後)

4.左右の貼り紙を生地の内側に折りこむ

5.前後の貼り紙を生地に貼る

6.前後の貼り紙を生地の内側に折りこむ

ざっとこんな感じの組立手順になります。

それぞれのパーツの呼び名は地域や企業によっても変わってきますが、よく使われている名称はこんな感じです。

・外側の紙:貼り紙、くるみ紙、化粧紙
・内側の紙:生地、芯材、厚紙、チップボール、芯ボール

iPhoneの箱の魅力は「Vカット」にあり

iPhoneの箱はVカット構造になっています。
Vカットとは、生地または貼り紙にV字の溝を掘ることです。
V字の溝を掘ることで、組み立てたときに箱の角部にシャープエッジを作ることができます。
このシャープエッジがクール感と魅力を生み出しています。

※生地にVカットを入れる

左写真:Vカットあり  右写真:Vカット無し

iPhoneの箱はクールですよね。

Vカットはとても大変なんです。

理由は3つあります。

  1. 専用の機械が必要
  2. 通常の貼箱より作業が増える
  3. 精密な作業が必要になる

先日このようなツイートをしました。

Vカットで一番大変なのは、作業の精密さが必要というところです。
V字溝、貼り工程の作業で少しでもズレてしまうと、組立不良が出てしまいます。
機械は精度の高いものを導入する必要があります。
その分通常の貼箱と比べても高級なものになってしまうわけですが、シャープエッジの演出は魅力度が高いのです。

iPhoneの箱よりすごい! 究極なシャープエッジの演出

iPhoneの箱は生地にVカットを入れているタイプなのですが、貼り紙にVカットを施すことで、iPhoneの箱よりももっと究極のシャープエッジが演出されます。

しかし、貼り紙は芯材に比べ紙の厚みが薄いので、この薄い紙にVカットを入れることは容易ではありません
これだと超精度の高いVカット機が必要になりますので、この仕様で生産できる工場は限られてきます。

写真:貼り紙にVカット

※貼り紙にVカットを入れているソニーXperiaの貼箱とiPhone貼箱の比較

ソニーXperia の貼箱の方が、エッジがよりシャープにできています。
ひときわ目立つ箱になっていますよね。これが究極のシャープエッジな貼箱です。

iPhoneの箱は細部までのこだわりがあります

実はですね、通常の貼箱は側面に少し段差が見えたりすることが多いです。


実際にはここまで目立ちませんが、わかりやすく説明するために、横から強い光を当てています。陰になっている部分で段差が発生します。

でも、iPhoneはこの段差が見えません。

同じようにiPhoneの箱に横から強い光を当てたものが次の写真です。

その秘密を明かします

貼箱は構造上どうしても貼り紙が重なるところが存在します。
重なっているところと重ならないところには、貼り紙一枚分の厚みの段差が生じてしまうため、このように段差ができるのです。

しかし、iPhoneの箱ではこの段差ができないように形状の工夫をしているのです。

どうやっているかというと、、、
それぞれ、左の図が通常の貼箱、右の図がiPhoneの箱の構造になります。


隠れてしまうフラップの長さを伸ばす。


3枚の貼り紙が折り重なり、部分的に途切れないようにする

iPhoneの箱はこういう構造にして、段差ができないような工夫をしているのです。

このこだわりには脱帽ですね。
iPhoneの箱は大量に生産しますので、貼り作業も全自動貼箱機を使い、全自動で製作しています。
この段差を消す作業においても通常の全自動貼箱機ではできず、専用の機械を導入することになります。

2️⃣ 素材

iPhoneの箱は「究極の白」を追求した紙素材を使用。光の反射を考慮し、高級感のある見た目になっています。

また、環境への配慮からプラスチック製のトレイからパルプモールド製トレイへ移行し、サステナブルな取り組みを進めています。

iPhoneの箱は「白基調」で統一されています。Apple製品の独特の風味が日常で染みついていますよね。

この「白」に秘密があります。

通常の印刷紙も白色ですが、白は白でも「白色度」というものがあって、iPhoneのパッケージで使われる素材の白色度は非常に高いのです。

つまり、究極の白なんです。

また、白色度だけではなくて、「色温度」にもこだわっています。
色温度とは、「K」ケルビンという単位で表現します。この値が大きいほど、人間は「白さ」を感じます。
人間が白く感じる白を言葉で表現すると、「青っぽい白」です。

iPhoneのパッケージで使われる紙素材は、人間が極限に白を感じてしまうものを採用しています。

エコに意識した取り組み

iPhone6S シリーズから、プラスチック素材をなるべく使わない取り組みをしてきています。
スマートフォンが収納されているトレイですが、以前はプラスチックの成形品でした。
しかし、6Sからパルプモールドが採用され、それ以来ずっとパルプモールドを採用しています。
また、イヤホンの収納ケースなども今は紙が使われています。
Appleという巨大な企業は社会的責任も求められると思います。こうやって真っ先に取り組むことで世界をリードしています。

※パルプモールドに興味のある方は、別記事に詳しく書いてあります。
「パルプモールドはパッケージのトレンドになる」を是非ご覧になってみてください。

3️⃣ 装飾

iPhoneの箱には、以下のような加工が施されています。

  • ラミネート加工 → 落ち着いたマットな質感を演出
  • エンボス加工 → iPhone本体の形を浮き上がらせ、高級感を強調
  • 箔押し(ホットスタンプ) → メタリックなフレームデザイン

ラミネート加工

iPhoneのパッケージはマット基調のものがほとんどです。
このマット基調は紙の表面にラミネートを施して表現します。
純白マット基調に統一することで、とてもシックで落ち着いたイメージを演出しています。

エンボス加工

写真はiPhone6 plusのものですが、箱の天面にiPhoneの形が浮き出ています。
これは エンボス加工 という手法で、紙を上下の型で挟んで平面の紙に凹凸をつけます。
この手法はわりと一般的ではありますが、iPhoneでも一部のモデルで採用されてきました。

箔押し(ホットスタンプ)

iPhone X の箱では、天面の本体が印刷されている部分にフレームの金属感を表現するために、箔押しが施されています。

これもまた大変な作業

印刷と箔押しは工程が別々になります。ぴったり位置を合わせることが重要ポイントになりますが、普通の機械ですと公差(位置のバラつき)が発生してしまうため、精度の高い箔押し機を導入する必要があります。

でも、いくら機械の精度があがっても公差は少なからず発生してしまうものです。
僕も長年この業界で働いてきましたが、これらのような精度を求められるデザインが上がってくるとゾッとしてしまいますね。(笑)

まとめ

iPhoneの箱のこだわりがものすごく強いということは、わかっていただけたかと思います。
捨てることがもったいないと感じるような魅力のあるパッケージは、細部までデザインにこだわり、あらゆる手法を駆使して表現されているものです。

「魅力」と「コスト」は比例する

iPhoneのパッケージは、他では真似ができないような表現を多彩に使っていますが、当然コストが高くなります。
設備も必要になります。不良率も高くなります。生産スピードも落ちます。

よって、iPhoneの箱はとても高いものになってしまっているのです。

パッケージとは、「捨てられるもの」という考え方が一般的です。
なので、企業もできるだけパッケージにコストを掛けたくないという考えになるのは当然のことです。
しかし、Apple社はパッケージにコストを掛けることを惜しんでいないようです。
この根底には、「パッケージも一つの商品である」という考えがあるのでしょう。
よって、この考えが一つのブランドを生み出し、それが消費者に伝わって結果的に「捨てられないパッケージ」と変わっていくのだと考えています。

他との差別化=「捨てるのがもったいない」

やはり、他とは違う「何か」が伝わると、なんとなく「捨てたくない」という行動になるのかもしれませんね。

これらのApple社の取り組みは、パッケージ業界にとって大きな影響を与えています。
現に、いろいろな企業様からパッケージの相談を受けるとき、「iPhoneのような感じにしたい」と、基準がiPhoneになって話される企業様が多くなりました。

それだけiPhoneのパッケージは魅力があり、みんなが真似したくなるものだということです。
それはエレクトロニクス系のみならず、ギフト商品、高級和菓子、高級チョコレート、高級酒、ワイン、ウィスキーなどにも広がってきたという印象があります。

※「Ispahan (イスパハン)」、NEXT FIVEのコラボレーション商品『Ispahan 2020』で採用された「究極シャープエッジの貼箱」
重箱タイプでとてもオシャレです。

パッケージを豪華にして売上が爆増した

実は、消費者はパッケージについて意識しながら商品を購入しているケースは少ないのです。
しかし、パッケージには「無意識」に消費者に伝えているものがあります。
つまり、パッケージにはそれだけの力が働いているということになります。
現に、パッケージを一新したら売上が爆増したという例はたくさんあるのです。
iPhoneのパッケージを参考にして、売上が伸びたという商品も増えてきたのではないでしょうか。

今後、パッケージの概念が変わって、「捨てたくないパッケージ」を目指す企業が増えていくかも知れませんね。

いかがでしたでしょうか。今回は「捨てたくないパッケージ」のヒミツというお題でiPhoneのパッケージを例に紹介しました。
少し長い記事になりましたが、最後までお読みいただきありがとうございます。
少しでもパッケージデザインなどでお役に立てられれば幸いです。

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