パルプモールドはパッケージデザインのトレンドになる

エコ素材 パッケージ パッケージデザイン

お疲れ様です。はやとです。
いつもご覧いただきありがとうございます。
今回はパルプモールドについてお話しします。

以前に【パッケージ以外で使われるパルプモールド】について記事を書いていますので、興味のある方はこちらもご覧ください。

【関連記事をみる】:パッケージ以外で使われるパルプモールド

本記事を読むと得られること

  • パルプモールドについて詳しくなる
  • パッケージデザインのトレンドがわかる
  • 環境意識が高まる

先日、こんなツイートをしました。


このツイートでかなり反響がありましたので、今回パルプモールドについて詳しく説明したいと思います。

簡単自己紹介

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本記事の構成

  1. パルプモールドってなに?
  2. ドライプレスとウェットプレスの違い
  3. パルプモールドに使われる材料ってなに?
  4. こんなことってできるの?
  5. どういった製品で使われているの?
  6. 本当にエコなの?
  7. デメリットは?
  8. まとめ

1.パルプモールドってなに?

金型で立体成形をした紙素材の成形品のこと

作り方

パルプモールドは、和紙を作る工程に非常に似ています。それと同じような製法になります。
簡単に言葉で説明するとこんな感じです。

1.紙を水で溶かす

2.細かい網を敷き、その上に材料を投入

3.余分な水を除去できたら網から取りはずす

4.乾燥させて完成

特徴は?

  • 立体成形ができる
  • デザイン性が高い
  • 環境にやさしい

デザイン性の高いパッケージを作ろうとすると、今まではプラスチック素材を使うことが一般的でした。
現在はパルプモールドの技術的進化によって、デザイン性の高い表現ができるようになり、注目を浴びています。

2.ドライプレスとウェットプレスの違い

パルプモールドには大きく分けて、ドライプレスとウェットプレスの2種類あります。

何が違うの?

ドライプレスとウェットプレスでは、乾燥工程に違いがあります。

  • ドライプレス : 成形 → 乾燥 → プレス → トリミング
  • ウェットプレス : 成形 → [乾燥&プレス] → トリミング

パルプモールドは、成形したあとはまだ水分がたっぷり含んでいる状態で、そのあと乾燥とプレスの工程があります。
乾燥したものをプレスする工程を「ドライプレス」、まだ水分を含んでいる状態のまま、乾燥とプレスを同時におこなう工程を「ウェットプレス」と言います。

こう言葉にすると分かりやすいです。
プレスするときに、
すでに乾いている → ドライプレス
まだ湿っている → ウェットプレス

となります。

他の名称

ドライプレスは「アフタープレス」

ウェットプレスは「ホットプレス」「ファインモールド」、「ファインパルプ」

ドライプレスでそもそもなぜ乾燥させたあとにプレスをするの?

乾燥工程で水分が抜けるとパルプモールドは大きく変形してしまうのじゃ。変形したパルプモールドを矯正する目的として金型を使ってプレスをするんじゃよ。

こんな感じで乾燥したあとはかなり変形します。
なので、乾燥したあとにプレス工程をおこなって形を整え最終仕上げとなります。

日本のパルプモールド製造メーカーでは、コストを掛けないためにプレス工程をしない製法が採用されているものがあります。
乾燥工程やパルプモールドの形状に工夫がされていて、あまり変形しないような対策をしています。

ウェットプレスでは、「ファインモールド」とか「ファインパルプ」と言ったりもします。
これは日本ではよく聞きますが、海外ではこの言葉は通じません。ドライやウェットの単語が使われることが多いです。
ちなみに中国語では、「干压」Gàn yā,「湿压」Shī yā と言い、意味はそのままでドライプレスとウェットプレスという意味です。

仕上がりに差がでる

ドライプレスはゴツゴツしている

ウェットプレスは表面がツルツル

 ドライプレス : 表面に少し網目が残ります。裏面はゴツゴツしている

 ウェットプレス : 表面はツルツルとした平滑度の高いものに仕上げることができ、裏面は網目がある

緩衝材や製品トレイなど、製品を守るために使われるものにはドライプレス、デザイン性を求めるものにはウェットプレスの採用ケースが多い。

3.パルプモールドに使われる材料ってなに?

基本は紙です

パルプモールドの材料は、紙素材です。業界的に言うと「パルプ繊維」です。
木材パルプ古紙リサイクルパルプ非木材由来パルプなどが使われます。
古紙リサイクルパルプは主に、段ボール古紙新聞古紙OA古紙 などが使われます。

段ボール古紙や新聞古紙を使うと、パルプモールドの色は茶色、灰色になります。

4.こんなことできるの?

パルプモールドでよくある質問として、4つ例を挙げてみます。

  1. 色をつけることってできるの?
  2. 印刷とか箔押しってできるの?
  3. 耐水耐油加工ってできるの?
  4. 抜き勾配、角R無しとかってできるの?

1.色をつけることってできるの?

できます(でもハードルが高い)

紙素材の原材料にインクを混ぜて着色原料を作り、成形をして着色パルプモールドを製作します。
または、もともと製紙メーカーで着色をした色紙を調達し、原料にするという方法があります。

しかし、着色パルプモールドの生産は少しハードルが高いです。

理由は、3つあります。

  1. 数量が少ないとコスト高(コストが安定する目安は数十万セット~)
  2. 環境問題
  3. 鮮やかさが出にくい

1.数量が少ないとコスト高(コストが安定する目安は数十万セット~)

着色をするときは、パルプモールドの原料にインクを混ぜていきますが、原材料、水、インクをうまく配合して色を合わせる必要があります。
これはなかなか難しい作業で、時間が掛かります。
また、生産が終わると材料を供給する設備、成形機などをすべてを洗浄する必要があり、これらの間接作業が多いのです。
よって、生産数量が少ないとこれらの間接作業にかかる費用の比率が高くなり、結果的にコスト高となります。

2.環境問題

パルプモールドの生産大国である中国が、昨今の環境問題の取組みにより政府の規制を受け、着色パルプモールドの生産ができる工場が少なくなってます。
材料の循環や浄水のシステムがないと政府からの生産許可がもらえなかったりします。
パルプモールドの着色需要が多ければ設備投資していくことになりますが、設備投資分を回収できる需要もなかなか集まらない現実があります。よって、そもそも着色パルプの生産ができる工場が減っているのです。

3.鮮やかさが出ない

パルプモールドの着色は、紙に印刷するみたいな鮮やかな色が出せません。
印刷物の仕上がりと比較するとどうしても見劣りしてしまうため、デザイン性を求められるとハードルが高くなります。

以上の3点の理由により、なかなか実現できないケースが多かったりします。
しかし、最近日本では化粧品のパッケージで着色パルプモールドが採用されたりしていますね。
上記の理由がすべて解決できれば、着色パルプモールドは目立ちますので優位性があります。

2.印刷とかできるの?

できます

ただしすべての印刷方式ができるわけではありません。
主にできることは次の5つです。

  • インクジェット印刷
  • パッド印刷
  • シルク印刷
  • 箔押し
  • エンボス

3D立体物への印刷には制限がありますが、表現することは可能です。

オフセット印刷のような繊細な印刷ができないので鮮やかさは劣りますが、グラフィックデザインの工夫でカバーできると思います。
箔押しエンボスは特に引き立ちますので、差別化する手法としてはおすすめです。

3.耐水耐油加工ってできるの?

できます

撥水材を原料に混ぜたり、表面をフィルムでラミネートすることができます。
撥水材は自然界に存在するものを使用しますが、ラミネートに関してはプラスチックベースのフィルムになります。
日本で食品用トレイとして使う場合は、使用環境によって食品衛生法を適用されるものがありますので、用途に応じて調査が必要になります。

4.抜き勾配や角R無しとかってできるの?

基本的にはできません

基本的にはできないのですが、形状によって近いものが作れる場合があります。
しかし、品質が安定しなかったり、不良率が高くなりコスト高の原因になったりします。
他との差別化には有効ですが、トータルバランスではあまりおすすめできません。

5.どういった製品で使われているの?

パルプモールドが実際に採用されているものをいくつか紹介します。

  1. 卵パック
  2. 家電製品の緩衝材
  3. 医療用アイテム
  4. 工業部品輸送梱包材
  5. 化粧品パッケージ
  6. 食品トレイ系
  7. 食品パッケージ系
  8. 小型家電製品

1.卵パック


これは言わずと知れたものかと思います。業務用では一般的に使われているものになります。

2.家電製品の緩衝材


中型の家電製品の緩衝材として採用されるケースが多いです。

3.医療用アイテム


注目のアイテムです。今後医療分野で伸びていくと予想しています。

こちらに関しては別記事【パッケージ以外で使われるパルプモールド】に詳しく書いてありますので、読んでみてください。

4.工業部品輸送梱包材


主に梱包材のコストダウンで採用されます。

5.化粧品パッケージ


こういったデザイン性を重視して、新鮮味のあるパッケージということで採用が増えてきました。
まだまだ採用されていないジャンルもありますので、これからどんどんと増えていくと思います。

6.食品トレイ系


昨今の環境問題でプラスチックの消費量を減らそうと、こういったワンポイント食器として紙素材のトレイを採用するケースが増えています。
実際に最近非常に多くのお問合せがあります。

7.食品パッケージ系

 
写真左は釜めしで有名な「おぎのや」のパッケージ。

写真右はエスコヤマさんのBOTCONというパッケージの蓋の部分で採用されています。
チョコレートの原料であるカカオの形を表現したパッケージで、とてもユニークでインパクトがありますよね。
立体表現ができるパルプモールドを使ったオシャレなパッケージを作ることができます。おすすめです。

8.小型家電製品


iPhoneのパッケージで採用されてから、各スマートフォンメーカーが軒並み真似をしたものです。

6.本当にエコなの?

エコです。

パルプモールドは言うまでもなく「エコ」ですね。僕はエコの王様だと思ってます。
その理由は、2つあります。

  1. パルプモールドの原料は、段ボールや新聞古紙のリサイクル材を使っている
  2. バージン材は「FSC認証材」「非木材由来パルプ」がメインとなっている

つまり、どのタイプのパルプモールドでも、資源を有効活用して、エコをアピールできるものになっています。
これだけ効率よく活用できている素材は、他にはないと思っています。

7. デメリットは?

金型費用がネック

 採用に至らないケースの理由のほとんどが、金型費用です。
金型費用はイニシャルコストになりますから、ご依頼者様が社内で稟議を通す段階で承認が下りないとかよくあります。
ですから、生産数量が少なくて金型費が償却できないレベルですと、ちょっと厳しいですね。

しかし、小型の個装パッケージであれば、金型は比較的安価で作ることができます。
目安として15万円~

個装パッケージは比較的ハードルが低いのでおすすめ

8.まとめ

パルプモールドの特徴をまとめます。

  • 大きく分けて2種類の作り方がある。(ドライとウェット)
  • 立体パッケージなど、デザイン性が高い表現が可能になってきた
  • 梱包輸送ではコストダウンが可能なケースがある
  • エコの王様である

2020年9月10日のニュースで、ソニーが企業としてプラスチックを使わないという宣言をしました。

ソニー、小型製品のプラ包装全廃へ
ソニーは10日、エレクトロニクス分野の小型製品に使われるプラスチック包装材を、2025年度までに全廃する方針を発表した。同日公表した、環境に関する25年度までのグループ中期目標で定めた。環境負荷の比較的少ない紙などの素材で代替し、プラスチック使用量の削減につなげる。
引用:2020/09/10 19:00 時事通信ニュース

これからこういう企業が増えていくと思います。
パルプモールドがパッケージのトレンドになりそうですね。

いかがでしたでしょうか。今回はパルプモールドについての記事でした。
少し長い記事になりましたが、最後までお読みいただきありがとうございます。

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