見落としていませんか?工場のコストダウン 包装資材での具体例4つ
お疲れ様です。はやとです。
いつもご覧いただきありがとうございます。
今回は主に製造業に関する内容で、「工場のコストダウン 包装資材での具体例4つ」をご紹介します。
専門的ではありますが、あらゆる製造業に言えることなので、是非参考になればと思います。
本記事のポイント
意外と包装資材にネタがたくさん隠れている
先日、こんなツイートをしました。
🆕製造業でコストダウンなら包装資材から
これから不景気と言われてますが、製造業だとコストダウン必須ですね。でもネタがすでに尽きてしまっているという工場も少なくないと思います。
そんな時は調達している包装資材に目を向けてみてください。
意外とネタが隠れていることがありますよ。— 世界のパッケージ屋さん (@packtoss) August 31, 2020
簡単自己紹介
本記事の内容
- 包装資材は見落としがち
- 工場のコストダウンネタ 具体例4つ
- 直面する現実問題
- まとめ
包装資材は見落としがち
製造業に長く携わっていると必ず厄介な課題に直面します。
その代表的なものとして、「コストダウン」ではないでしょうか。
乾いた雑巾をさらに絞るくらいのことをやってきていたにもかかわらず、上からは平然とコストダウンせんかーい と煽りあったりしますよね。
【コストダウン さけぶあんたが コスト高】
こちらは1999年のサラリーマン川柳1位となったもの。
1999年といえば、バブルが弾けて長い長い不況のに陥ってた時代です。
実はこの頃から製造業で死ぬほどコストダウンに取り組んできています。なのですでに乾ききっている雑巾からさらに水滴を落とすのは至難のワザなんですよね。
「意外と包装資材はコストダウンネタがたくさんあるんじゃ」
でもですね、僕の経験から、包装資材のコストは見落とされがちです。
理由は、自社製品のコストダウンが最重要だからですね。
当然です。肝心の自社製品にコスト競争力が無くなれば致命傷になりますから。
でも、それと同時に目の届きにくい包装資材やその他いろんな副資材などに目が向けられる会社さんは今までも良い成績を上げていることが多いですね。
包装資材が見落とされる3つの要因
- 1.業者にまかせっきり
- 2.年々厳しくなっている品質基準
- 3.包装仕様の先入観
この3つの要因について解説していきたいと思います。
1.業者に任せっきり
包装資材ってとりあえず商品を守ってくれればOKという考え方が多く、また専門知識を持った人が組織に居ないことが多いです。
よって工場で使う包装資材は付き合いのある業者や近場の業者に丸投げしてしまう傾向があります。
そうなると、業者が設計したものがそのまま採用されて使われ続けることになります。
包装材というものは、輸送してる間やユーザーに届くまでの間に製品を守る役割を果たさなければなりません。
ここで考えてみてください。業者はあなたの会社で扱う大切な製品を壊すわけにはいきません。よって壊れないように設計するわけですが、リスクを負わないようにある程度過剰的に設計することがあったりします。
業者側の視点で見れば、過剰な包装は売上と利益が上がりますし、輸送問題も出にくいので品質が良いという良い評価がもらえるので、良いこと尽くしです。
よって結果的にこのような状況になっているまま使い続けていることがあったりします。
2.年々厳しくなっている品質基準
二つ目の要因として、厳しくなる品質基準が仇になるケースが挙げられます。
量産前の評価テストをパスしても、輸送中や市場で問題が出たりなんかしてしまうと、その問題一つに対して企業は対策を取ることになります。
つまり、
企業は評価基準を上げることになる
評価基準を上げてしまうとおのずと強度の高い材料を使わなければなりません。そうなると当然コスト上がります。
本来であれば、コストに影響が出ない範囲で設計などの工夫で対応することがいいのですが、業者はそこまで問題意識を持つことがありません。
なぜならば、やっても手間ばかり増えて、自分たちの利益になりませんから。
また、問題の詳細を深く知ることも難しいので、いちばんシンプルに素材の補強を提案することになりがちなのです。
3.包装仕様の先入観
業者は自分のところで取り扱うことのできる包装材しか提案してきません。
例えば、段ボール工場ならば段ボール材の提案をします。プラスチックトレイ工場ならば、プラスチックトレイの提案をしてきます。
しかし、必ずしもその仕様が製品にとって最適な包装仕様であるとは限らないのです。
実は、製品の仕様、あらゆる輸送条件、販売国、ユーザー層によって包装仕様の適正が変化します。
一例を上げますと、
1.輸送は国内のみ、距離は200km未満、倉庫保管考慮せず 2.国外輸出を想定、距離は3,000km、空輸+陸送500km 高温多湿気候地域、倉庫保管3ヶ月
1と2では、輸送梱包材の素材選定は全く変わってきます。コストは倍以上変わってくるレベルです。
もっと細かく言うと、部品のトレイの素材はプラスチックと紙のどちらが最適か というレベルの話になってくるわけです。
なので、そもそも委託しようとしている業者が自社の製品に最初から適していない場合があり、結果的に効率が悪く、コストだけが高くなる資材を選んでしまっている可能性があります。
これはほんの一例に過ぎないのです。
重要ポイント:業者が適切かどうかから考える必要がある
工場のコストダウンネタ 具体例4つ
ここからは実際に僕が取り組んだ輸送梱包コストダウンの実例を紹介していきます。
代表的コストダウン方法はこの4つ
- 1.部品共通化
- 2.輸送効率を上げる
- 3.過剰包装の見直し
- 4.リユース、リターナブル
1.部品共通化
理屈では理解していてもなかなか取り組めないのが部品の共通化です。
調達に関わる方は一度じっくり「共通化」について議題として取り上げて取り組まれると良いと思います。
部品の共通化をすると何が良いことあるの?
製品を直接保護する袋類を例に挙げます。
製品を一つ一つポリ袋やプチプチ袋に詰める作業を行なっているとします。
その袋っていろんなサイズや素材の厚みが存在していませんか?
これって調達する側からするととても面倒ですよね。調達する部品が増えれば発注や在庫管理に手間が掛かります。
業者側の視点で話しますと、種類が増えると生産を分けて在庫を管理して、納品にも気を使って・・・と間接的にコストが増えていきます。
結果的にこの間接コストは部品コストに反映されます、つまりコスト高になっていくというわけです。
共通化した場合、一つの部品に対して量が増えます。量が増えれば単価を下げることができます。
調達側からすれば、業者と交渉するネタになるんですよね。
共通化と過剰包装のバランスが大切
共通化を図るうえで一つ注意点があります。
それは、過剰包装とのバランスを取ることです。
共通化をするということは、おのずと「大きいものに合わせる」ということになります。
つまり、小さい製品の梱包に大きい包装材を使うことになり、小さい製品の視点では「過剰包装」になるということです。
どちらの考えを優先するかは、その時その時の状況に応じて変わってきますので、トータル的に総合評価をして判断する必要があります。
工場の手間を減らす手法の最後に、「包装部材の設計改善」が挙げられます。
例えば部品のトレイにプラスチック製の成形トレイを採用していたとします。
部品を収納するときにとても入れにくかったり、取り出しにくくて顧客からのクレームに対応して作業を増やしたりと、余計な工数が掛かってしまっていることがあります。
自社の製品そのものにこのようなクレームがあった場合は、当然真剣に取り組むのですが、
包装資材ですとこの対応が適当になされて、お粗末な対応しかせず、結果的にものすごい効率が悪いまま運用しているケースも見受けられます。
2.輸送効率を上げる
キーワード:空気の量を減らす
箱の体積がいくつで、その中の製品占有率は何パーセントで… って細かく算出されたことありますでしょうか?
ほとんどの会社さんはNoですよね。
実際に数値化しなくても、気にしたことがあるかどうかが重要なポイントです。
もし製品占有率が低くて空気ばかりを運んでいるとすれば、見直すとめちゃくちゃ効果あったりします。
シンプルな話をします。
例えばある箱の中に製品が10個入っていたとします。
その製品梱包のレイアウトを見直して、箱サイズを同じにしたまま11個入ったとすれば、輸送効率が10%向上します。
輸送効率が10%向上するということは、輸送費が10%削減できるということなのです。
この記事を読んでる方で、調達や包装資材に関わっている方、またはそれに近いことをされている方、是非計算してみてください。
あなたの工場で輸送効率10%上がったら、つまり包装資材が10%削減できたら、いったい年間いくらの輸送費が削減できますか?
年間数百億の売上を持つ工場では、包装資材の見直しをするだけで億単位の輸送費が削減できたりします。
輸送費が削減できるということは、それがそのまま工場の利益になるわけです。
つまり億単位で利益が変わるということです。
輸送効率を上げる方法というのはそう簡単ではありませんが、実現できると超お得な効果を生むことができますので、かなりおすすめです。
3.過剰包装の見直し
過剰包装は必要以上のコストを掛けることになりますので、すぐに見直した方が良いですね。
段ボールの材料の種類ってどのくらいあるか知ってますか?
厚みが厚いもの、薄いもの、紙が強いもの、弱いもの。
段ボールは3層、または5層になっているものがほとんどですが、それぞれの材質の組み合わせでたくさん種類が作れます。
現実的には十数種類に絞ってますが、国によっても扱う材料が様々で、とても奥深いものなんです。
冒頭にも書きましたが、製品が何でどこで作られどこに輸送されるかによって、段ボールの材質は何が最適なのか変わってきます。
つまり、この選択をミスると過剰包装になるということです。
段ボールに限らず、あらゆる包装資材の素材を見直して最適化することで過剰包装をなくし、結果的にコストダウンができるということです。
4.リターナブル
最後に、リターナブルについてお話しします。
リターナブル(Returnable)とはこの場合、輸送で使われた包装資材をまた工場が回収して使いまわすことを言います。
主要取引先ですと、毎日のように納品してたりしますよね。納品時の帰りのトラックに顧客(納品先)で
使い終わった包装資材を積んで持ち帰ります。
そして、その包装資材を再度使うことで、毎回新しいものを調達するコストが省けます。
リターナブルは、何回も使うことを想定しますから、長持ちする素材を使う必要があります。
そうすると、現在よりもはるかに高い強度を持つ素材を使う必要がありますので、単純にコストが上がってしまいます。
もうお気づきだと思いますが、たとえ調達コストが上がったとしても、例えばそれを10回使うとすれば、コストは10分の1になりますので、コストアップ分と使う回数のバランスで最終的にコストダウンできるかどうかの判断となります。
常に回収が容易なものであれば、リターナブルにすることで大きなコストダウンが見込まれます。
直面する現実問題
悩む人「頭ではわかっているんだけどなー。。。」
主に立ちふさがる壁3つ
- 現場から文句
- イニシャルコストがかかる
- その先のお客さんの承認を取ることに莫大な労力が掛かる
ネタは揃っても、なかなか前に進まないことが多いのがコストダウンの特徴だったりするかもしれません。
それくらい面倒くさい内容ではあるものです。
以下の内容は包装資材に限らずすべてのことに言えるかもしれません。
現場から文句
コストダウンや効率化を図ろうとすると、生産現場では今までのルーチンが崩れてしまうわけです。
既存の生産に慣れている現場の作業者にとっては、変化があると面倒なものです。
その現場から影響力のある人が文句を言いだすと、それで計画が進まないなんてよくある話ですよね。
僕もたくさん経験してきました。
そんな時は、「これが成功すると○○円利益出ます」と言います。具体的なプランと数値を伝えることで、なぜだか伝わったりしますね。
イニシャルコストがかかる
包装資材の共通化や効率を図ろうとすると、新たに金型を作成したりすることがあり、そのときはイニシャルコストがかかるものです。
数万円レベルのものであれば問題ありませんが、何十万何百万になりますと、社内で稟議を通す必要があります。
これがまた面倒で、上司や他部門に説明していかなければなりませんし、屁理屈上司を納得させる労力を考えると一歩踏み出せないことがよくあります。
そんなときも、理論的に攻める以外方法はありません。僕も昔は理論とハッタリで乗り切ってきました。(笑)
その先のお客さんの承認を取ることがむずかしい
僕的にはこれが一番厄介かなと思います。
なぜならば、自分で調整できる範囲が限られますよね。
コストダウンの提案をしても、何か変化があると受け入れませんという漠然とした回答しか来ない場合もありますよね。
でも、結局はここも伝える以外方法がありません。コストダウンの数値を伝え、どれだけ効果があるかを感覚的に理解していただくことに尽きます。
こういう場合の僕の戦略はこうです
「年間3,000万円の削減ができますので、その先のお客様には1,000万円分部品コスト下げる提案をしてください。残りの2,000万円はあなた側の利益です」と明確に資料に書いてしまいます。(笑)
なぜか具体的に文面にすると、承認通ったりしてましたね。
仕様変更して本当に問題がないのか確証が取れないから進められない
試作品から評価して仮にパスしたとしても、実際の輸送時に問題が発生しないか不安なものです。
もし問題が発生した時の責任を考えるとなかなか踏み出せないこともあると思います。
そんな時は、「試験運用」として一部の製品の仕様を変更し、問題が発生しなければ全製品の仕様移管をするという方法をおすすめします。
例えば、コンテナ1本やトラック1台分のうち、1パレットだけを改善した仕様に変更し、数本(台)運用してみて様子を見るというやり方です。
何事も急に変化を与えると抵抗がありますので、徐々に段階的に取り組み、結果を出していくことが大切だと思います。
まとめ
包装資材のコストダウンは効果が大きいのでやるべき
なかなかネタが無い場合などは異業種からの情報を取ったりすると良い案が見つかったりします。
また、いろんな包装資材を取り扱える業者に相談すると、いろんな素材での提案があったりしますのでこちらもおすすめです。
素材に特化すると視野が狭くなりますから、広い視野でいろいろな情報を取っていくとよいと思います。
ということで、今回は包装資材のコストダウンについてのお話しでした。
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